実を結ぶために
「実を結ぶために」
金城学院中学校 宗教主事
北川美奈子
私たちは、日々多くの言葉を聞いています。耳に入ってくる言葉や情報ということで言うなら、起きている間中といってよいほどです。しかし、それらの言葉や情報をすべて心に深く刻んでいるわけではありません。聞き流していることも多くあります。聞く耳をもって聞く、集中して聞くということをしないと、なかなか、自分の心に届いてこないものです。
「キリストへの時間」は、ラジオ放送です。教会で行われている礼拝や映像配信によるものとは違い、「聞くこと」でのみ成り立っています。私は、2021 年4月に金城学院中学校に赴任したことで、「キリストへの時間」に関わらせていただくようになりました。1 年目の時、イントネーションなどによって受け取られ方が違ってしまうことを録音の時に指摘していただき、はっとしました。普段は、耳からの情報だけでなく、目からの情報で補われていることが多々あることを思い知らされました。
また、ある時、タクシーに乗りましたら、そのタクシーの運転手の方が「キリストへの時間」を時々聞いているとおっしゃいました。それは、朝早く仕事がある時などにラジオ放送を聞いていると流れてくるからということでした。ラジオ放送は、仕事に行く時や家事をしながらなど、集中して聞こうと思って聞く人だけではなく、他のことをしながらも聞かれていることを改めて心に留めました。
イエス様は、マタイによる福音書13章 1 ―9節において、「種を蒔く人」のたとえを話された後、弟子たちに、そのたとえの意味を話されました。その時、「種を蒔く人は御国の言葉を蒔くのであって、良い土地に蒔かれたものとは、御言葉を聞いて悟る人であり、ある者は百倍、ある者は六十倍、ある者は三十倍の実を結ぶのである。」と言われました。良い土地とは、御言葉を聞いて受け入れる人たちのことです。御言葉を聞く、しかも聞く耳を持って聞く時に、神様が百倍、六十倍、三十倍という多くの実りを与えてくださると言われます。イエス様はこのたとえを語られた時に、「耳のある者は聞きなさい」と言われました。耳のある者は、御言葉の種がその人の内に蒔かれる時に良い土地のようにしっかりと御言葉を受け止め、実を結ばせることができます。しかも、その実りに必要な光も雨も養分も神様が与えてくださいます。良い土地にするために神様が耕してくださり、種が蒔かれた時に芽が出て、実りをもたらすことが出来るようにと、条件を整え備えてくださるのも神様です。
ですから、種を蒔く人は、自分の力ではなく、神様の御力によって芽が出、実りがもたらされることを信じ、神様に委ねて蒔きます。でも、神様に委ねていれば、どのように種を蒔いてもよいのでしょうか。「キリストへの時間」に関わらせていただくことで、集中して聞いてくださっている方々だけでなく、何かをしながら聞いてくださっている方々の耳にも届く御言葉の種が蒔かれないといけないのだと教えられました。その土地に合う種が蒔かれるように、思わずラジオの声に耳を奪われるような御言葉の種を蒔くことが種を蒔く人の役割であることを忘れないようにしたいです。
そして、これからも、「キリストへの時間」を通して蒔かれた種が、百倍、六十倍、三十倍の豊かな実を結ぶことを信じて、良い実を結ぶ御言葉の種を蒔くことができるよう祈りつつ録音へと向かわせていただきます。